「かぐや」で何が見られたか
先月7月25日に東京大学生産技術研究所でJARS(日本リモートセンシング研究会)の月例研究会が行われた。2つの演目があったのですが、その一つに『「かぐや」で何が見られたか』という題目でJAXAの春山純一氏のご講演があった。月探査衛星「かぐや」についてはこのブログでも2007年10月6・7日にアップしているが、今回は実際にセンサを開発され観測を行ってきたご本人から、いろいろ苦労話や裏話を聞くことができた。
月探査衛星の名称セレーネは、NASDA(宇宙開発事業団)とISAS(文部省宇宙科学研究所)の共同ミッションで、当初2003年頃H-Ⅱロケットで打上げる予定だったそうです。この計画の名称は、SELENE:SELenological and ENgineering Explorer(月に関する学問ならびにエンジニアリングのための探査機)から付けられた。工学系の人と理学系の人との調整の結果か?苦心の後が分かる。勿論、セレーネはギリシャ神話の「月の女神」に由来する。春山さんの担当したミッションのリスム(LISM)は
LISMは(Lunar Image/Spectro Meter)の略で光学観測の3つの側面、TC(地形カメラ)、MI(マルチバンド・イメージャー)、SP(スペクトルプロファイラー)のセンサ開発から観測・解析を担当している。各センサは地形把握、地質区分、鉱物同定を担っている。セレーネミッションの目的は、月の起源と進化の謎を解明することと月面着陸など月の利用の可能性を調べることです。ここでも工学系と理学系の目的が同居している。それはともあれ、春山さんが今回、主としてお話されたTCについて、いろいろ素晴らしい画像を見せて頂いた。類似の画像はJAXAのHPに公開されているものもある。TCでの月面観測はB/H=0.57で立体観測もできるので高さもわかる。観測幅は60km空間分解能10m。特に興味深かったのは、アポロ15号飛行士が撮影した写真(NASA提供AS15-82-11122HR)と同じ風景を地形カメラの立体画像から作成したものでした。TCの立体視画像では、宇宙飛行士の撮った写真のように岩塊や月面車などの小さいものは写ってませんが、遠方の山々の形や丘のようななだらかな地形はほぼ忠実に再現されていました。また、アポロ15号は、雨の海を取り囲むアペニン山脈の麓、ハドレー谷に着陸しのですが、このハドレー谷は、全長80km、深さ300mの蛇行谷と呼ばれ、谷の向こうには高さ3400mの山塊がそびえる月の名勝地だそうです。TCから作ったこの地点から見る山塊の立体画像も素晴らしかった。このハドレー谷は、溶岩流が何枚も流れ重なった所だったそうです。北西から南東を臨むように作成したTCの立体画像でも、ハドレー谷の上部に30数億年前に噴出した溶岩流が積み重なる様子がわかります。風化した地形も地球では水による「酸化」が主ですが、空気のない月では太陽からの太陽風による還元が働くので地質の解釈も地球の経験では推し量れない。セレーネは極軌道なので月の両極付近のクレータの下に氷もあるのでは・・・などなど興味いっぱいの講演でした。
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